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かきおき

『後悔』を軸にキャラクターと楽曲で突き刺しまくるジュブナイルRPG『カリギュラ2』の話がしたい

もしも人生の後悔をやり直せる世界があったなら……貴方は行ってみたいと思いませんか?そしてもし周りの人がそんな後悔を抱えているとしたら……貴方はその中身を知りたいとは思いませんか?

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こんな人の仄暗い欲望を刺激してくれる、フリューのRPGカリギュラ2』が2021年6月24日に発売されました!大好評発売中です。いやもうはちゃめちゃに面白かったです!!!前作を遊び、キャラクターの魅力とシナリオのエッジはあるんだけどシステムがね……みたいなことを言っていたんですが、今作は一本のゲームとして完成度がしっかりと高い!!

なんだよ、2かよ〜初代*1もやってないわバイバイと思われた方もちょっとだけ話を聞いてくださいオネガイシマス この感想記事では、どれほどにカリギュラ2というゲームが魅力に溢れていたか2からでも大丈夫だからやって欲しいという懇願を込めて書きたいと思います。

 

※記事内には人によってネタバレに感じる要素があるかもしれません。0の状態でプレイされたい方は読まないで下さい。

 

 

後悔だらけの昨日とバイバイ

本作は仮想世界リドゥ』を舞台に繰り広げられるジュブナイルストーリーです。前作と同一の世界観上ではありますが、5年後の時間軸で異なる仮想世界上でのお話が描かれています。個人的には初めてカリギュラに触れる方にとっても、丁度いい塩梅かなと感じました。

リドゥ内はNPC以外に現実世界から取り込まれた人間たちが存在しており、皆ぬるま湯の人生を過ごしています。彼らに共通しているのは、全員何か『後悔』を抱えているということ。これは、主人公を含めて仲間になってくれる人たちにとっても例外は存在しません。あの時あれを選んでいれば……とか、あそこでああすりゃよかったニャといった事を全て忘れ、IFの世界で思い思いの人生を謳歌しているわけです。更に言うと、もしも……に連動させて年齢や性別、職業まで望みのままなんですよ。

え!そんなことしていいの!嬉しいありがとう!一体誰がそんなやさしい世界に連れて行ってくれるの?

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彼女です。正体不明のバーチャドール*2『リグレット』。リドゥの女神であり、人々が心に負った傷へ寄り添い後悔から救う存在です。

 

また、本作ではもう1体のバーチャドール『キィ』が存在しております。

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この世界の破壊者であり、生まれたばかりな機械故に人間の心への理解も乏しい。ワガママな言動を行う彼女は主人公に「この世界は偽物だ。だから一緒にぶっ壊そう!」なんて事を要求してきます。とんでもねえ。

しかし、キィの登場により現実を思い出した面々はそれぞれの葛藤の下、世界からの帰宅を望む集団帰宅部を結成。リグレット及びその配下である『オブリガードの楽士』との戦いに挑んでいく……というのが本作の大まかな筋です。どちらが正しくて、どちらが救いの存在なのか。どちらと言い切ることも出来ないストーリーがこの作品の「らしさ」を強く色付けております。

 

キャラクターと深く、深く踏み込み向き合っていく

カリギュラはテーマに偶像殺し×現代病理という類を見ないものを掲げており、今作ではキャラクー達の『後悔』に踏み込むことが出来ます。一体なぜリドゥに来ているのか?更に言うと彼らがとっている理想の姿の源泉は何なのか。実際のプロフィールはどのようなものなのか。

これらは、刑事ドラマやミステリーでいうところの『動機』に近しいものだと思います。推理ものでトリックの中身はあんまり理解出来なくても、たっぷりページをとって語られる犯人の過去はガッツリ読む人いませんか?僕はそうです。それを見たいがために手にとっているところがあるんですよね。そこに用意されている理由を知りたいと思ってしまう気持ちって、物語を読み進める上では凄く強い推進力を与えてくれると思っています。それを何と本作では、主要人物やクエストで関わる人を含めると200人超分*3も用意されています。ただ覚悟しなければならないのは、傍観者であるドラマや書籍と違い秘密に触れるのは自分の手で行わなければならないということ。見てはいけないものほど見たくなる『カリギュラ』とはよく名付けたもんだ……

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こんな風にキャラの真実暴露へ踏み込んでいくことが出来ます(真実面はぼかし加工を施しています)。数行小説としての完成度が高く、これ目当てでクエストに没頭する時間が結構ある。

エストでは、アイテムを持って行ってあげたり敵を討伐したりといったものの他に、フィールドで手に入る装備アイテムをつけて話しかけるというものがあります。プレイヤーとしては謎を解き明かしたいので「フィールドを探索する」「アイテムを守護する敵が強いから戦力を上げる」などなどするわけですが、このプレイの動機を与えてくれるサイクルが凄くうまいんですよね!そして解決できると概ねハッピーエンドや面白エンドを見ることが出来ます。僕の持論ではありますが、サブクエストが面白い作品は名作。こっちを進めたいがために本編放置してずっとマップをうろうろしちゃうんですよねー。しかし幕間が用意されているので、その間に動くのは罪悪感なし!クエスト周りは2になってからかなり良くなったポイントだと感じました。*4ホント2は遊びやすいので軽率にやってくれ〜〜!

 

もちろんメインキャラクターとはガッツリ話すことが出来ますし、個人のキャラシナリオも用意されています。面白いのはWIREという機能で、キャラクターにチャットが送れるんですよ。

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キャラブックに書いてありそうなことから、少し踏み込んだ質問まで様々。

ただ雑談を楽しめるだけじゃなくって、ここでキャラクターの大切にしているものや軸を感じられる時があるので、本当の姿を推理するきっかけにもなってきます。いやしかしめちゃくちゃどうでもいい事を聞くのが楽しい。「月が綺麗ですね」とか言うな。律儀に全部返事してくれるんだよ向こうは。

肝心のキャラシナリオでは、本人の後悔に踏み込むことが出来ます。このゲーム、帰宅部という集団を組みますし全員の仲もかなり良好なので見ていて嬉しくなれちゃうんですが、それでも全員の前で仲間に対して「お前本当は〇〇じゃないのか?」って聞くのはタブー感がありまして。つまり本編じゃなくてキャラシナリオじゃないと明かされない事実を残したまま終了が往々にしてありえてしまうんですよ。そして、そこに踏み込めるのは主人公以外にいない。

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ここでありがたいのは主人公といつも行動を共にしているキィの存在ですね。本性に触れるにはなかなか聞きづらい話もしなくちゃならないんですが、人対人のコミュニケーションだと躊躇する話でも、人間をよくわかっていないキィはスパッと発言しちゃってくれます。時にはおいおいと思うこともあるのですが、結果的にはいい方向に働いてくれますし、主人公がおいおいと思う発言をしちゃうよりは話の流れに納得があるんですよね。そしてこういうやりとりを通じて、キィ自身も人を知り成長してくれるのが感じられます。

人の後悔に触れるとは言いましたが、お前の後悔を白日の下に晒し上げてやるぜグヘヘってな悪趣味な感覚ではないです。むしろ対話を積み重ねていった上に成り立つものなんですよね。後悔と向き合った後の彼らはこれからどうしたいかを考えるようになり、後味の良さを感じられるほど。ただまあだからと言って軽率に扱いたくはないんですが……。

一人一人が持っている後悔は誰しもが持っているものではありません。ただ、世の中の誰かが抱えているものにはなっています。もしかしたら、すぐ近くの人が実は抱えているものかもしれない。現代病理を描く上で、それがただのエンタメ扱いになってないなと感じられました。後悔と向き合う、後悔を整理する、後悔を許容する……多様な対処の提示は令和的というか、今の世の中にフィットした作品作りをしていると思えましたね。 

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個別シナリオ要素はありますが、恋愛関係にはなりません。ただ学祭では誰と一緒にお化け屋敷へ行くかが全員分用意されていたりします。こだわりをありがとう。主人公(画像右)も楽しんでたよ!

雰囲気と謎解き、二重の意図が込められた最高の音楽たち

ゲームの歴史上において、音楽は構成要素として非常に重要な役割を担い続けています。数々のゲームにおいて、ボス戦のBGMが良かったとか、街のサウンドが耳に残るといったことが語られ続け、作品の評価に大きな影響を及ぼします。

カリギュラシリーズでは楽士と名乗る敵対集団ひとり一人に担当ボカロPさんが付き、数々の魅力溢れる楽曲を堪能することができます。

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機械の身体を持った楽士『マキナ』が作った楽曲『永遠の銀』。担当コンポーザーさんはkemu(堀江晶太)さん。数々のアニメ楽曲でも馴染み深い方です。

これがまーーめちゃくちゃにいい!個人的な話ですが、ボーカロイド文化を通ってきていなかったので最初は豪華メンバーと言われてもあまりピンと来ていなかったんですよ。が、プレイし新たな曲が出る度に脱帽しっぱなしでした。

マップ内ではインストバージョンが、戦闘に入ると歌詞が入るようにチェンジしていく演出もとても良かったです。しかもこれがいちいち最初から再生されるのではなく、シームレスに移行するんですよ。音楽をとても大事に扱っているゲームだからこそだと思いますし、プレイしていて感動しましたね。*5

更に楽士たちも現実に後悔を抱えた人間たちでして、曲にはその正体に繋がるヒントが散りばめられております。ゲームで一番印象に残るのが戦闘曲というのを悪用しているとはよく言われている。戦闘中は歌詞に耳を傾けながらも戦っていかなくてはならないのですが、今作では戦闘画面の背景に歌詞表示がある親切設計。演出も様々で、さながらMVのよう。予想を立てながら聴くのが楽しいのは勿論、全てを知った上で再び聴いた時、その仕込みように「やられたっ……」ってなります。コンポーザーさんみんな天才。

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 『パンドラ』さんを担当するのはAyaseさん。YOASOBIの方として最近友人からよく名前を聞いていました。サビから激しくなるのがめっちゃ気持ちいい……。

楽士と直接戦う際には、楽曲もリミックスver.に変化します。これが更に彼らの後悔を強調したかのような作りになっていて、互いに譲れないんだよなあとなる情景が強いカタルシスを与えてくれます。クリア後は楽士の魅力にも気付き、全員好きだわとなるかもしれません(僕はそうなった)。

 

これらの楽曲は全てリグレット(cv. 香里有佐さん)が歌唱を担当されているのですが、ボス戦後にはキィ(cv. 峯田茉優さん)にも歌えるようになります。リグレットは人に寄り添う女神らしく曲を解釈しそれぞれに合わせて歌い方を変化させているのですが、キィは曲の解釈などなくひたすらにキィっぽく歌っています。セイ!とか合いの手入れるような曲じゃないのに平気で入れてきますからね。この辺りの対比構造もとても面白く作られていて、キィver.はどうなるかってのが楽しみの一つになっています。それにしても二人ともめちゃくちゃ歌がうますぎる!!

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ツミキさんが担当された『件』の楽曲『ミス・コンダクタ』。 雰囲気と物語展開が非常によく合致し、加えて歌に込められたものと件の後悔とのリンクもあって個人的に一番好きな楽曲です。「言葉より大切なもの等 何処にも無くて」……僕も本当にそう思う。是非プレイして曲の真価を味わって欲しいです。

拠点にあるジュークボックスから全楽曲を聴き返す事が可能な親切設計となっています。そうなんですけど、リミックスを含めたサウンドトラックが今めちゃくちゃ欲しいです。カラオケに入れて欲しいです。頼む、フリュー、各種関連会社……。

(追記:サウンドトラックは大好評発売中!感謝!!)

クセのある戦闘システムは慣れると楽しい独自システム

帰宅部のメンバーは全員『カタルシスエフェクト』と呼ばれる心の貌*6を纏って戦います。武器やスキルの名称も様々で、例えば器用な性格をした『能登吟』はボウガンで状態異常を起こしてくれますし、天才中学生『月島劉都』は『オッカムズレイザー』『レタ・セ・モア』など賢気な名前の技を使います。

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かなり異質な姿で戦う『駒村二胡』ちゃん。元気な後輩キャラなんだが??

コマンドバトルではありますが、独自システムとしてコマンド選択後にこれからこうなりますよ!という未来予測『イマジナリーチェイン』が出ます。カウンター技が豊富なこのゲームでは、このまま動くと敵の攻撃と噛み合わないという事が多々あるので、発動までの時系列を動かし立ち回っていくというのが基本システムです。

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下部のバーを操作して自分だけが優位に立てるよう立ち回る。DTMの編集を意識しているのでしょうか。洒落たシステム。

未来が見えるんならカウンターで完封のヌルゲー!と見せかけて、カウンターの効かない技があったり、技発動後の隙が結構大きかったりするのでバランスは程よいです。硬直が邪魔して仲間の少ない序盤は思うように動かせないかもしれませんが、4人パーティを組めるようになると役割分担やコンボを繋げるのが楽しいですよ。

それでも癖がある事は否めないんですが、やっていく内に感覚は掴めていく。はずです。オートモードがありNORMALの戦闘はそれなりに緩く設計されているので詰むって事はないと思います。キィが戦闘中に歌ってリグレットの曲を塗りつぶす機能『フロアージャック』を発動すると一気呵成に攻め立てることも可能。個人的にはHARDが一番ちょうど良く楽しめました。

 

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『天吹茉莉絵』は二丁拳銃と手榴弾で戦う女の子。

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爆発の時に耳を塞いでしゃがむモーションがあるよ。かわいいね!!!

このゲームを手に取った方へ刺さる作品であれと願っています

さて、ここまで面白かった!やって欲しい!ということを書き続けてきましたが、改めて思い返してみるとやはり全人類遊んでくれ!と言えるゲームではないよなと思います。そもそも他社さんの勇者になって冒険するゲームや、怪盗になって世直しをするゲームと比べると、グラフィックを始め届かない部分は存在しています。更に言うと、ストーリー全体も王道からは一歩どころじゃなく離れた位置づけにいます。でも、だからこそカリギュラにはカリギュラにしかない武器で挑んでいる要素がすごく感じられました。

 

再三言っておりますが、全員が後悔を抱えた人間として掘り下げられるキャラクターの魅力はまさにその筆頭。登場人物の一人が自分たちのことを「ダメ人間の集団」と称しますからね。僕は彼らに触れてみて非常に人間くさく、愛おしい存在だと感じられました。*7後悔に踏み込むという過程を経ることは、普段ゲームを遊ぶときとは違った形での、魅力の掘り下げに繋がる体験です。その他、WIRE機能、イラスト差分、選択肢差分、探索中に画面下で繰り広げられる会話劇、キャラ間の対比構造……などなどキャラを見せるために用意されたあらゆる手段からは、もっと魅力を感じてもらいたい!という意気込みを感じさせられました。

 

また、エッジのある作品ではありますが粗が目立つ作品かというとそういう訳でもなく、シナリオに関して言うと丁寧さが見られるんですよね。楽士とはそれぞれ対峙していくシナリオ構造になっていますが、その間に他のやつらは何をしているのか?という所も描かれておりますし、ご都合をご都合で片付けすぎない良さが光っていました。特に、力に目覚めたばかりで強敵を退けられる訳がないだろう!という多くのゲームに共通するツッコミどころには、思わず「そんなのアリかよ!」と言いたくなるカリギュラ2なりの解答が待ち受けていました。是非本編で見て欲しい。製作陣もやり過ぎたと判断したのか、その後も結構話題に上がる解決策を。

 

本当に手を出してみるなら2からで大丈夫です。確かに初代を遊んでいるからこそ通じる仕掛けもありますし、僕が初代を遊んでいなかったら出ていないであろう悲鳴は何回もありました。ただ、2の主人公は「あなた」なので初代の出来事を知らない人物として世界に存在しても一切おかしくありませんし、そこから見える登場人物は既プレイ者とは違う見え方になっていると思います。僕はそれがとても羨ましい。(人の感想に飢えています、感想を食わせてください)

2を遊んでみて、カリギュラにおけるキャラクター造形や世界観を好きになったならば、初代へと遡って遊んでみるのも一興だと思います。スター・ウォーズだって大体の人はエピソード4から見ているんだよ!

 

総じて、万人に受ける作品ではないかもしれませんが、万人に突き刺さる要素を持った作品だと感じました。痛みも後悔も、物語の魅力もある作品です。そして、その突き刺さり方が作品を手に取った方にとって価値のあるものであったなら、ファンとしてとても嬉しいです。

 

さぁ、後悔無き人生を━━  リグレット 

 

 

 

*1:5年前に発売されたVita版ソフト『カリギュラ』及び、2018年発売の完全版『カリギュラ オーバードーズ』(こちらはPS4、Switch、STEAMで展開)

*2:ボーカロイドのような存在。前作ではµというバーチャドールが人々を仮想世界『メビウス』に閉じ込める事件を起こした。歌がめちゃめちゃにうまい

*3:200人超えの動機はコナンで言うと大体70巻分くらい

*4:前作ではクエスト達成のためにフィールドの同じところへ何度も行かされたり、どの敵がドロップするか分からないアイテム探しなどを要求された。トラウマの解決に詐欺師へ弟子入れさせるなどパンクでコアな要素が前面に出ており非常に尖っていた印象がある

*5:同様のシステムは前作にも存在。どんな超技術が使われているのかと思いましたが、単に同時に流してミュートを切り替えているだけだそうです。コロンブスの卵!!

*6:当然のようにここにも現実とのリンクが仕込まれている。個性に溢れ、あまり他のゲームで見ない武器も多いです。

*7:こうなってしまうともう勝てない